フローズン・リバー
二人の母親
貧しさゆえに
公式サイト http://www.astaire.co.jp/frozenriver
2008年サンダンス映画祭グランプリ受賞
カナダとの国境に面し、モホーク族の保留地を抱えるニューヨーク州最北部の町で、2人の息子を育てながら1ドル・ショップの店員として働く、白人女性のレイ・エディ(メリッサ・レオ)。クリスマス直前だというのに、ギャンブル依存症の夫が、待望の新しいトレーラーハウスを買うために貯めていたお金を持っていなくなった。
夫の行方を探すレイは、モホーク族のライラ・リトルウルフ(ミスティ・アップハム)知り合い、アジアからの不法移民をカナダからアメリカに密入国させる、危険な仕事に引き入れられる。
貧しさから、犯罪に手を染めるふたりの女性。
ビンゴ会場の駐車場で夫の車を見つけたレナ。
運転する女を追跡すると、男がバス停に置いてバスに乗っていってしまったので、捨てたのだと思ったと言う。
レナがお金に困っているのを知ると、車が高く売れるからと、カナダ側の保留地に一緒に行きますが、実はトランクに不法入国者を入れて、アメリカ側に運ぶのをレナは手伝わされます。
実はライラはこの仕事用に車がほしかったのですが、彼女のしていることを知っている中古車販売の店は、彼女が欲しがる型の車を売ってはくれません。
橋ではなく、表面が凍結したセントローレンス川を渡れば、保留地内は警察に追われる心配はありません。でもこちらも気をつけないと、氷が割れる危険があります。
*セントローレンス川は、オンタリオ湖を水源としてセントローレンス湾まで1,197km。水源からの全長は3,058kmもある。オンタリオ州とアメリカ合衆国のニューヨーク州を隔てる国境を形成し、その後はケベック州内を流れる。
だまされて不法入国を手伝うはめになり驚いたレナですが、テレビのレンタル料や手付金を払ったトレーラーハウスの残金の支払いのために、ライラの仕事を手伝う事にします。
ライラは未亡人で、幼い子供は姑に取られてしまいました。子供と暮らすお金を稼ぐために、危険で違法な仕事をしています。
レナには、15歳と5歳の息子がいます。
長男のトロイ(チャーリー・マクダーモット)は、母がお金の工面に苦労しているのを知っていて、内緒でヤバイアルバイトに手を出します。
クリスマスイブにパキスタン人夫婦を運んだあと、ライラは違法な仕事をやめて、まともに働こうとします。しかしレナは、あと1回で残金が払えるからと、ライラを誘って国境を越えます。その帰り道、警察に追われてしまいます。
始めはいがみ合っていたレナとライラですが、次第に信頼関係を築いていきます。それは、ふたりが母親であるという共通点によるところが大きいです。
パキスタン人の荷物が爆弾だったりしたらと思ったレナは、川の途中で荷物を捨てましたが、それには赤ちゃんが入っていたと知り、二人は川へ探しに戻ります。
姑に子供をとられたライラの気持ちも、レナには充分わかるのです。
ふたりが母親だからこそというラストでもありました。
二人とも肝っ玉のある女性。特にレナは、銃を撃つ事もいとわない。
家族の生活を守るためならと、罪を犯す。
背に腹はかえられず、罪を犯す。
雌は種の保存本能なのか、生き続けよう、生き抜こうとする生き物だと思います。
生存第一。そのために、善悪は二の次になる。
監督のコートニー・ハントがニューヨーク州北部にある夫の実家を訪れた際、国境を越えてタバコを密輸しているカナダ人がいるという実話をヒントにした話だそうですね。
アメリカの現状の一端を知りました。
ごく普通の人が、貧困ゆえに犯罪しか生きる道がないというのは考えさせられますねえ。まあ、アメリカに限った事ではないですけどね。
始めの二人の様子もスリリングだし、不法入国者を運ぶ様子も毎回違うし、サスペンスとしてもよくできていたと思います。
女性監督らしい演出だなあと思うシーンも、多々ありました。そういうシーンも印象深かったです。
メリッサ・レオは「21グラム」「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」に出演していたそうですが、覚えていませんでした。
不法移民のブローカー(?)のマーク・ブーン・ジュニアは、脇役でよく見かける俳優さんですね。
(鑑賞日2月23日)
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----「凍りついた川」?ニャんだか寒そうな映画だニャあ。
「その背景はね。
でも、映画はほんとアツい。
川の氷を溶かしてしまいそうなくらいだ」
----へぇ〜っ。それはまた…。
どういうお話ニャの?
「新居購入のために貯めていた大金をギャンブル依存症の夫に持ち逃げされ、
ふたりの子供を抱えて途方に暮れている白人女性レイ(メリッサ・レオ)。
彼女は、ふとしたきっかけでとモホーク族のライラ(ミスティ・アップハム)という女性と出会う。
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「フローズン・リバー」★★★★
メリッサ・レオ、ミスティ・アップハム、チャーリー・マクダーモット主演
コートニー・ハント 監督、97分 、
2010年3月27日公開、2008,アメリカ,アステア
(原題:Frozen River )
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2008年/アメリカ/97min
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投稿: KLY | 2010年2月24日 (水) 21:54
★KLYさん
アメリカは本当に両極端なんですよね。
課題を突きつけられた感じです。
投稿: 風子 | 2010年2月25日 (木) 08:41
根本的に、女性と男性の違いを感じますよね。
子供のために働き、子供のためにトンデモのことをしちゃうのも、女だから。
不法なことではあるけれど、悪いことではないが、国の基準では悪いことになってしまう。
格差やら、民族やら、いろんなことを考えさせられた秀作でした。
投稿: sakurai | 2010年4月15日 (木) 11:29
★sakuraiさん
社会問題を扱いながら、映画としても面白くできていたと思います。
投稿: 風子 | 2010年4月15日 (木) 20:17