ザ・ロード
生きるべきか死ぬべきか
公式サイト http://www.theroad-movie.jp
ピューリッツァー賞受賞の同名小説(コーマック・マッカーシー著)の映画化
文明が突如崩壊して10年以上経つ。空には暗雲がたれこめて太陽は見えず、植物も動物も次々と死滅していた。掠奪や殺人をためらわない人間たちの手から逃れ、わずかに残った食物を探して、父親(ヴィゴ・モーテンセン)と少年(コディ・スミット=マクフィー)は、南を目指してとぼとぼとひたすら歩き続け、旅をしていた。このままでは、冬を越せそうにないからだ。
その道中、父は息子の未来を願い、生きる術のすべてを教えようとしていた。
原作の著者は、「すべての美しい馬」と「ノーカントリー」と同じ。
予想通りとても暗~~い内容で、映画として面白い作品ではありません。
天変地異なのか核兵器なのか、世界が崩壊した理由は、原作でも特定されていないらしいです。
生きていた方がいいのか、死んだ方がましなのか。
こんな世界で、家族も友人もいなかったら、自殺しちゃうかもね。
父子は名前もない。
今のアメリカでは、dadyとかdadとか呼ぶ事が多いと思いますが、この子は“パパ”と呼んでいますね。
とにかく草木もなく、人間を襲って、その肉を食べている集団があちこちにいる。
「ザ・ウォーカー」でも、そうでしたね。
なんかねえ、狩猟民族と農耕民族の違いを感じますわ。アメリカって、食文化が貧弱な気がするんですよね。それでこういう世界を創作しちゃうんじゃないかと思ってしまいます。
まあ、極限状態にあると、人間は何をするかわからない生き物ではありますけど。
旅の道中で出会う人間達も、善き者なのか悪き者なのか、判断するのはなかなか難しい。他人が信じられない世界ですからね。
ロバート・デュバルとガイ・ピアースも、父子と出会います。
食糧を探して立ち寄る建物でも、安全なのか危険が潜んでいるのか、ハラハラします。
父親が持っている銃には、弾は2発だけ。道中で1発使ってしまうので、残りは1発。もし人間を食べる奴らに捕まりそうになったら、自殺するようにと息子にも言います。
善き者であろうとし、人に優しくしようとする少年。
崩壊後の世界しか知らず、友達もずっといなくて、寂しくもあるのでしょう。
しかし生き抜くためには、警戒を怠らないようにし、時には冷酷な決断も必要な事を教える父。
ヴィゴはヌードも披露していますが、栄養失調の状態の役なので、減量していて痛々しいです。
息子を愛する気持ちも、ひしひしと伝わってきます。
とにかく、父子に泣けます。 この点は、期待通りでした。
少年が父に毛布をかけるシーンには、特に泣かされました。
息子を演じるのは、1996年生まれのオーストラリア俳優、
コディ・スミット=マクフィー。
映画の中では、母親役のシャーリーズ・セロンに、顔立ちがものすごーく似て見えました。
こんなに母親似じゃ、父は妻を忘れられないのではと思ってしまいました。
コディくんは日本未公開(DVDのみ)の「ディア マイ ファーザー」でも、エリック・バナの息子でした。
「ディア マイ ファーザー」はレイモンド・ガイタ原作の自伝小説の映画化で、これも父と息子に泣ける感動作。とっても健気な息子を演じていましたよ。
今後も注目の子役です。
シャーリーズは、ヴィゴの夢や回想シーンに登場。
世界崩壊前、崩壊してから父と子が旅に出るまでの様子は、そこでわかります。
エンドロールの間に聞こえる声や音で、少年のその後が推測できるような。
心の火を絶やさずにあれ
(鑑賞日6月30日)
« ヒックとドラゴン (試写会) | トップページ | レポゼッション・メン »
「【映画】さ行」カテゴリの記事
- シン・ウルトラマン(2022.05.22)
- スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2022.01.29)
- 最後の決闘裁判(2021.10.31)
- ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2020.03.23)
- ジュディ 虹の彼方に(2020.03.15)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: ザ・ロード:
» 映画レビュー「ザ・ロード」 [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP]
The Road (Vintage International)◆プチレビュー◆荒廃した大地を旅する父と子のロード・ムービー。淡々としてストイックな終末譚だ。 【65点】 文明が崩壊し人類のほとんどが滅亡したアメリカ。僅かに生き残った人々が互いの人肉を食らう狂気の生き物と化す中、かすかな...... [続きを読む]
» 「ザ・ロード」(2009) [choroねえさんの「シネマ・ノート」]
[[attached(0,class=popup_img_300_449 width=300 height=449)]]
先日、 原作の感想記事 を書かせていただきましたが、映画も公開されたので早速観てまいりました。(^^)
原因ははっきりと語られませんが、地球に天地異変のような何かが起こり、世界はほぼ死滅状態。空も自然も全てが灰色となり、文明が壊滅してしまった中、残された人間はどのように生きて行くのか。非情に重い問いかけの作品です。
..... [続きを読む]
» ♯40 「ザ・ロード」 [ここはここ]
映画 「ザ・ロード」 THE ROAD を観ました
ジョン・ヒルコート監督 コーマック・マッカーシー原作 2009年 アメリカ
映画を映画館で観る楽しみのひとつに、本編が正に今始まるという時のワクワク感があります。
それなのに今年は出だしの数分を見逃し途中から観ると言う邪道を何度かやってしまった。
そして今回も・・・。
(映画館が遠かったのよ今日は一回こっきりの上映だったのよ〜と誰に言分けだ・・・)
それでも、もそもそ書いてしまうわたし(^^;
<全ネタバレしてます>
... [続きを読む]
» ザ・ロード(2009) [銅版画制作の日々]
原題:THE ROAD父には息子が、息子には父が全てだった。それぞれが、相手の全世界となって──。 [続きを読む]
» ザ・ロード (The Road) [Subterranean サブタレイニアン]
監督 ジョン・ヒルコート 主演 ヴィゴ・モーテンセン 2009年 アメリカ映画 112分 ドラマ 採点★★★★ 親が子供を殺すニュースほど、聞いていて陰鬱な気分になるものはないですねぇ。“子供は親の所有物である”を前提にしたかのような罰の軽さも、その気分を一層…... [続きを読む]
» 【映画】ザ・ロード…2010年の残務整理(4) [ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画]
今日はお仕事です
しかもそのお仕事はうちの会社で最近上手くいっていないモノで、今回は私が担当
自分は失敗したこと無いのですが妙にプレッシャーが…まぁ頑張ります... [続きを読む]
私も、この少年、シャリーズに似てるなあ・・・って思いましたわ。
なかなかの存在感でしたね。
アメリカが狩猟民族・・って言うより、ヨーロッパからやってきた人らが、あくまでも略奪系の人だと思いますわ。
投稿: sakurai | 2010年10月25日 (月) 09:33
★sakuraiさん
コディくんは、今後注目の子役ですね。
>ヨーロッパからやってきた人らが、あくまでも略奪系の人だと思いますわ。
アメリカはもともとヨーロッパからの移民の国ですからね。
投稿: 風子 | 2010年10月25日 (月) 11:20
それまではあくまでも善人であったのに、所有するものを持った後は、
息子を守るために鬼のようになる時もあった父親。
何としても、息子を生かすこと=次の世代へと命を繋ぐことに命を懸けた父親。
やはり、父の気持ちが痛いほど感じられる作品でした。
コディくんは、最近『モールス』に出演してるんですね。
これから注目の若手として、巧く育ってくれるといいなと思います。
投稿: 悠雅 | 2011年10月22日 (土) 22:29
★悠雅さん
息子を守り、息子がひとりになっても生き残っていけるようにと、父親の愛情ですねえ。
コディくん、成長が楽しみな子役ですね。
投稿: 風子 | 2011年10月23日 (日) 15:06