別離
やるせないそれぞれの事情と心理
公式サイト http://www.betsuri.com
米アカデミー賞外国語映画賞受賞作
監督: アスガー・ガルファディ 「彼女が消えた浜辺」
テヘランで暮らす英語教師のシミンは、11歳になる娘テルメーの将来を考えて、外国へ移住するつもりだったが、夫ナデルは、アルツハイマー病の父を置き去りにはできないと、移住に反対。夫婦の意見は平行線をたどり、シミンが裁判所に離婚申請をするが、協議は物別れに終わる。 シミンはしばらく家を出ることとなり、ナデルは家事と父の世話のために、ラジエーという女性を雇うことにした。
しかし、ある日ナデルが帰宅すると、父は意識不明でベッドから落ちて床に伏せていた。 ナデルは怒りをあらわにして、ラジエーを問い詰め、彼女を手荒く追い出してしまう。 その夜ナデルは、ラジエーが入院したとの知らせを受けて、シミンと一緒に病院に様子を見に行くと、彼女が流産したことを聞かされる。
「彼女が消えた浜辺」は、ひとりの女性の失踪に関して、それぞれの立場からそれぞれの推理が語られる話で、結局彼女はどうなったのかというその結末には、ちょっとがっかりしたんですけど、今作は、社会問題を詰め込みつつ、推理劇のように語りながら、人間ドラマが展開します。
家族や社会が抱える問題は、どこの国でも同じなんだなあと思いました。
なぜこんな事になってしまったかのか、はっきり答えが出せるわけでなく、とても考えさせられ、切なく苦しいです。
ラジエーは妊娠19週で流産し、イランでは、ナデルが彼女の妊娠を知っていて突き飛ばし、それが原因で階段を落ちて流産したとなれば、殺人罪になります。
裁判の争点となるのは、
ナデルが、ラジエーが妊婦であることを知っていたかどうか。
ナデルは、彼女を突き飛ばしたのか。
ラジエーの流産は、突き飛ばされたのが原因か。
中流家庭のナデル一家、貧困層のラジエー一家、それぞれの心理と、隠していた事実が少しずつ明かされていきます。
ここからネタバレです。
ナデルは妊婦とは知らなかったと主張しますが、妻のカンはさすが。
病院で流産と聞かされた時、シミンは夫に驚ろいた様子がなかったと思いました。
そう、ナデルは妊婦と知っていたけど、自分が殺人罪で服役したら、父の面倒を見る者がいなくなると考え、嘘をついていました。
シミンはラジエーに会い、夫を説得して示談金を払うからといいますが、すると今度はラジエーから、思いがけない告白をされます。
実は流産の前日、目を離したすきに外出したナデルの父を捜して外に出て、ナデルの父をかばって車にぶつかり、その夜からおなかが痛かった。翌日ナデルの父をベッドに縛って自分が外出したのは、医者に行くためだったと。流産の原因は、そのせいなのか、突き飛ばされたせいなのかわからないと。
ナデルが嘘をついた理由はわかりますが、ラジエーが本当の事を言わなかったのはなぜなのでしょう。失業中の夫ホジャットに内緒で働いていたから?
それとも、泥棒呼ばわりされたから?
お金に関しては、ラジエーは無実ですよね。シミンが引き出しからお金を出してましたよね。ナデルはそれを知らなかった。
それと、実はシミンはナデルの家に戻るだった。夫が離婚しないでくれ、別居しないでくれと言ってくれれば、別居しなかったような感じですね。夫は妻がそんな気持ちでいることは知らなかったし、男は女に頭を下げられないんでしょうね。すれ違う夫婦も万国共通。
ラスト、娘テルメーはどちらを選んだのでしょうか。
同じくひとり娘なので、彼女の辛さはよくわかります。
どちらの親からも愛されているのに、一緒に暮らす親を選ばなくてはなりません。
胸が締め付けられる思いで、見終わりました。
とても良くできたドラマだけれど、辛いわ~
(鑑賞日4月24日)
« Black&White/ブラック&ホワイト | トップページ | 幸せの教室 (試写会) »
「【映画】は行」カテゴリの記事
- プラダを着た悪魔2(2026.05.16)
- ハムネット(2026.04.25)
- プロジェクト・ヘイル・メアリー(2026.03.30)
- 爆弾(2025.11.13)
- ブラック・ショーマン(2025.09.26)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 別離:
» 別離/Jodaeiye Nader az Simin [LOVE Cinemas 調布]
『彼女が消えた浜辺』でベルリン国際映画祭の監督賞を獲ったイランのアスガー・ファルハディ監督作品。ベルリン国際映画祭で金熊賞を含む3冠を獲得、第84回アカデミー賞では外国語映画賞を授賞した。前作同様に現代イランの社会事情やそこに絡む宗教的な問題といったかの国独特の問題も孕みつつ、洋の東西を問わず変わらぬ人間心理を鋭く描いている。... [続きを読む]
» ひとは何故、かくも悲しい生き物なのだろう~『別離』 [真紅のthinkingdays]
JODAEIYE NADER AZ SIMIN
NADER AND SIMIN, A SEPARATION
「娘の教育のために」 海外移住を主張する妻・シミン(レイラ・ハタミ)と、ア
ルツハイマーを発症した父を置いては行け...... [続きを読む]
» 『別離』(アカデミー賞外国語映画賞受賞作) [ラムの大通り]
(原題:Jodaeiye Nader az Simin)
----今年のオスカーって、
『アーティスト』と『ヒューゴの不思議な発明』 との一騎打ちと言われていたけど、
結局、『アーティスト』が作品賞など主要部門を制したね。
「そうだね。
一方、最初から確実視されていたのが
アカデミー...... [続きを読む]
» 別離 (2011) JODAEIYE NADER AZ SIMIN [銅版画制作の日々]
はじまりは、愛するものを守るための些細なldquo;嘘rdquo;だった――。
好き度:=60点
ベルリン国際映画祭で金熊賞を含む3冠に輝いたのをはじめアカデミー外国語映画賞受賞など世界中の映画賞を席巻したという話題作品を観て参りました。
実は前作「彼女が...... [続きを読む]
» 『別離』 今年必見の1本 [コナのシネマ・ホリデー]
アカデミー賞外国語映画賞受賞ほか、80冠を超える世界の映画賞を受賞したイラン映画。描かれているのは紛れもなくイラン国内の話だが、それは特別な国の話ではなく、私たちも共感しうる問題をはらんでいる。映画作品としての完成度の高さを含め、今年必見の1本だと思う... [続きを読む]
» 『別離』 嘘つきは泥棒の始まり [映画のブログ]
さすが『彼女が消えた浜辺』のアスガー・ファルハディ監督だ。新作『別離』も実に面白い映画である。
テヘランを舞台に描かれるのは、離婚や介護や失業等々、どこの国でも人々の頭を悩ませる問題だ。映画...... [続きを読む]
» 別離 人それぞれの打ちのめされ方(ネタバレあり) [もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)]
先日、母と見に行った「ル・アーブルの靴みがき」の作品選びで
ハッピーエンドでなさそうだったので、避けた作品。でも、これまたよかったです。
なお、あらかじめお断りしておきますが、ネタバレ満載です。まず、いまから言っても
遅いのですが、ブログタイトルからして...... [続きを読む]
» イラン映画「別離」感想 [ポコアポコヤ 映画倉庫]
2時間釘付け。4つ★半~5つ★ [続きを読む]


ですねえ。
投げかけてあとは見る人が始末をつけて・・・と言う感じもなくはない。
辛すぎます。
ちょっと譲歩とか、人の話を聞く!という姿勢があったらこんなことにはならないと思うのですが、主張して何ぼ!と言う世の中のアンチテーゼなのかもです。
世間様ほど私も「彼女が消えた浜辺」は、あんまり評価してないのですが、こちらはなかなか引き込まれました。
投稿: sakurai | 2012年7月17日 (火) 08:08
★sakuraiさん
見る人によって、それぞれ思うところがあるでしょうね。
誰がいいとか悪いとか決め付けられない、なんともやるせなくて辛い事情でした。
投稿: 風子 | 2012年7月17日 (火) 10:36