真夜中のゆりかご
人は見かけによらない
公式サイト http://yurikago-movie.com
監督: スサンネ・ビア 「ある愛の風景」 「未来を生きる君たちへ」
敏腕刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)は、美しい妻アナ(マリア・ボネヴィー)と乳児の息子アレクサンダーとともに、湖畔の家で幸せに暮らしていた。そんなある日、通報を受けて同僚シモン(ウルリッヒ・トムセン)と駆けつけた一室で、薬物依存の男女と衝撃的な育児放棄の現場に遭遇する。衝撃を受けながらも、法律の壁に阻まれて乳児を保護することができず、アンドレアスは無力感に苛まれる。そんな中、思いもよらぬ悲劇がアンドレアスを襲い、彼の中で善悪の境界線が揺れ動いていく。
この人の映画は見たいと思う監督のひとり、スサンネ・ビア。
楽しい映画ではないけれど、どう思うかといつも観客に問いかけて考えさせられる。
本作も、人間の弱さや愚かさを描きながら、愛情と希望が感じられた。
意外な展開もあって、サスペンスとしても楽しめました。
そういえば、伏線はあったなあと思いましたよ。
それと、水辺の風景が美しい。
まだ赤ん坊の息子の夜泣きに悩まされながら、妻と交代で面倒を見ているアンドレアス刑事。
ニコライ・コスター=ワルドーは、ひいきのイケメン俳優のひとり。
アンドレアスとアナは美男美女の夫婦ね。
ある日通報を受けて相棒のシモン(ウルリッヒ・トムセン)と訪れた部屋には、育児放棄された乳児のひどい姿が。
その子の父親トリスタン(ニコライ・リー・コス)は、ヤク中の上に女に暴力をふるう男で、執行猶予中。
あんな両親のところに置いていおいたら、乳児は死んでしまうとアンドレアスは思いますが、法律的には乳児が虐待されているとは言えず、施設に預けられない。
そんな中、アンドレアスの息子が突然死んでしまう。
すぐに通報しようとしますが、妻に止められます。
妻はひどく取り乱し、通報しないでほしいと言います。
そして息子を病院に連れて行ったら自殺すると言い、アンドレアスは困ってしまいます。
ここからネタバレ。
妻を鎮静剤で眠らせ、息子の遺体を乗せて車を出します。
相棒のシモンに相談しようとしますが、アル中のシモンは酔いつぶれていて、電話に出ません。
そしてアンドレアスはトリスタンの部屋に忍び込んで、死んだ自分の息子とトリスタンの息子ソーフスを入れ替えてしまいます。
アンドレアスも冷静な判断ができない状態だったのよね。
その時には、良かれと思った事だったのでしょう。
トリスタンがすぐに通報するものと思っていたアンドレアスですが、ヤクでハイになっている最中に息子が死んだと思ったトリスタンは、執行猶予が取り消されて刑務所に戻る羽目になると、ソーフスが誘拐されたと見せかけます。
死んだ自分の息子アレクサンダーがどこにいるのか知りたいアンドレアスは、厳しくトリスタンを尋問します。
ヤク中で自分の子供に関心のないトリスタンは気づきませんでしたが、母親であるサネ(リツケ・メイ・アンデルセン)は、死んでいる子がソーフスではないと気づきます。
事情を知っている観客には、尋問の様子に緊張が走りますね。
一方、アナは悩んでいた。自分の子供は死に、夫は他人の赤ん坊を連れて来た。その子を育てていけるのか。
そしてある夜、橋から身を投げて自殺してしまう。
妻の死に打ちひしがれるアンドレアス。
辛い中、なんとかトリスタンに子供を埋めた場所をはかせた。
しかし子供の検死結果を聞いて、愕然とする。
なんと突然死かなにかだと思っていたアレクサンダーは、虐待されて死んだのだった。
まさか妻が虐待していたなんて、にわかには信じられず、大きなショックを受けるアンドレアスと観客。
育児ノイローゼなのか。
それとも子供の頃の愛情不足?
子供がほしいと思って生んだけど、生まれた子供に愛情が持てなかったとかかしら。
アナの両親は孫には興味がないみたいで、会いには来ないし、送ってくるプレゼントは赤ちゃんには不要の物。
裕福らしいけど、アナの母親は自分の娘の面倒は、ベビーシッターが何かに任せきりだったのかも。アナのセリフから、そんな風にも推測できるわね。
子煩悩な親でないことは確かみたいよ。
一方サネはひどい母親のように見えて、実はトリスタンがすすめるヤクはできるだけ避けているし、トリスタンがソーフスを虐待しないように気を付けていたのよ。
最初にアンドレアスとシモンがソーフスを保護した時、診察した医師がソーフスは健康体だと言っていたわよね。
こんなところにも、ポイントがあったのね。
この映画を見て、ベン・アフレック監督作の「ゴーン・ベイビー・ゴーン」を思い出しました。
子供にとってどうするのが最善なのか、難しいですねえ。
(観賞日5月18日)
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『真夜中のゆりかご』 を試写会で鑑賞しました。
二日酔いにはキツイ内容の映画だった
【ストーリー】
愛する妻と幼い息子と幸せな毎日を送っていた刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)は、通報を受けて同僚のシモン(ウルリク・トムセン)と共に現場に掛け付けた一室で、薬物依存のカップルと目を覆うような育児放棄の現場を目の当たりにする。夫婦でわが子をいつくしむ日々は愛に満ちていたが、ある日思いがけない悲劇に見舞われ、アンドレアスの中の善悪の価値観が揺らいでいき……。
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スサンネ・ビア監督の映画ということで、楽しみにしていました。
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あまり触れられていませんが、アナのキレ癖は彼女の生い立ちと関連があるんでしょうね。それが大きな悲劇を生んでしまったのは何とも切なく哀しい。
アンドレアスのやったことは許されませんが、薬注の男を切り離したことは、ソーフスと母親を救ったと思いますし、そう解釈したい作品です。
TBお願いします。
投稿: atts1964 | 2015年10月21日 (水) 08:20
★atts1964さん
何が子供にとっていいのか、いい親とは?とか難しいですね。
投稿: 風子 | 2015年10月21日 (水) 14:05